Derm.2005
皮膚の電顕の有用性
石河 晃
1
1慶應義塾大学医学部皮膚科
pp.147
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412100170
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人体を地球にたとえると,森林(皮膚)を見て地球の健康状態を判断するのが皮膚科診断学(発疹学),一つひとつの森林の木(細胞)の生育状態をみて,その森林が健康かどうかを判断するのが病理学,1本の木に何が起こっているかを見るのが電顕である.臨床像を理解するには皮膚病理学を習得することが重要である.同様に,皮膚病理学を究めるには電顕形態学を習得するとよいのであろうか.これは一面真実である.電顕を使って初めて見えてくるものが病気の性質や原因と密接に関連している場合,皮膚電顕形態学は非常に重要な役割を担うことになる.例えば,先天性表皮水疱症の病型診断である.表皮細胞内に水疱があり,ケラチン線維の凝集塊がある場合,Keratin 5/14をコードする遺伝子の,ケラチン分子重合のため非常に重要な部分に変異があるDowling-Meara型の単純型表皮水疱症である,と診断確定がなされる.1本1本の木を調べることにより,森林の病態を診断するのみならず,病気の原因にまで迫る所見が得られるわけで,電顕の面目躍如である.
一方で,木を見て森を見ずでは診断ができないケースも多くある.例えば,異型性の強いスピッツ母斑とメラノーマは電顕的形態のみでは鑑別できない.また,扁平苔癬など細胞浸潤のパターンが重要な場合,電顕は無用の長物となる.電顕は必ずしも病理学的変化を理由づける所見がとれるわけではないことも事実である.
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