Derm.2005
皮膚科健診を振り返って
佐伯 秀久
1
1東京大学医学部附属病院皮膚科
pp.155
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412100171
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アトピー性皮膚炎(AD)の有病率に関しては,皮膚科医が直接健診に参加して調査した報告はまだ少ないのが現状である.平成12~14年度厚生労働科学研究(AD疫学班:山本昇壯班長)の一環として,小学校健診による全国規模のAD有病率調査(玉置邦彦班員)が実施され,私も調査を手伝わせていただく機会を得た.健診の対象は小学1年生と6年生とし,全国に8つの拠点施設(旭川医科大学,岩手医科大学,東京大学,岐阜大学,近畿大学,広島大学,高知医科大学,九州大学)を設け,約24,000名を対象に調査した.結果は,学童の約1割(11%)がADに罹患しており,そのうちの約3/4は軽症というものであった.
学童を対象にした全国規模の調査は今回が初めてであり,とても貴重な経験をさせていただいたと思っている.また,この健診を振り返ってみると,いくつか感じる点があった.まず,皮膚科医は学校医には指定されていないため,この種の健診を小学校で実施する場合,参加を強制することはできない.そこで,原則は任意参加で実施するわけだが,この点をあまり強調しすぎると健診参加率が極端に落ちてしまい,有病率調査の意義が失われてしまう.強制ではないが,できるだけ参加してほしいという形で健診を実施した結果,健診参加率は全体で約8割を達成することができ,ほっとしたのを覚えている.また,小学校健診を成功させるには,学校関係者のみならず,地域の教育委員会や医師会の協力も必要であることを痛感した.さらに,お忙しいなか研究協力者として拠点施設で健診を実施していただいた先生方には,ここで改めて感謝の意を表したい.
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