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ベバシズマブとその作用機序
ベバシズマブ(bevacizumab:アバスチンAvastin®)は,血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)に対するヒト化マウス抗体であり,転移性大腸癌の治療に対して2004年2月に米国食品医薬品局に認可された薬剤である。日本では2007年4月に治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌の治療薬として製造販売が承認された。しかし,眼科領域の疾患には適応のない静脈注射用製剤である。
VEGFは,20年前の1989年に血管内皮細胞に特異的な増殖因子としてクローニングされた1)。この報告によって,VEGFはin vitroでの血管内皮細胞の増殖とin vivoでの血管新生を著明に亢進させることが明らかとなった一方で,1983年に報告されていた血管透過性因子2)(vascular permeability factor:VPF)と同一のものであることが判明した。その後の研究により,VEGFはチロシンキナーゼ受容体であるVEGFR-1(Flt-1),VEGFR-2(KDR),VEGFR-3(Flt-4)を介して作用する蛋白ファミリーを形成することが示され,そのなかにVEGF-A,VEGF-B,VEGF-C,VEGF-D,VEGF-E,PIGF(placental growth factor)がある。当初発見されたVEGFはVEGF-Aであり,その遺伝子は染色体6p21.3に位置し,8つのエクソンからなる。選択的スプライシングにより4つのアイソフォーム(VEGF121,VEGF165,VEGF189,VEGF206)がつくられる。VEGF121,VEGF165は可溶性であり,とくにVEGF165は病的血管新生や炎症に最も関与すると考えられている。
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