総説
喫煙と頭頸部癌
宮原 裕
1
1奈良県立医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.97-104
発行日 1993年2月20日
Published Date 1993/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900675
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はじめに
耳鼻咽喉科領域の腫瘍は広く頭頸部腫瘍と呼称され,唾液腺腫瘍はもちろんのこと,甲状腺腫瘍も含めて診断・治療が耳鼻咽咽喉科・頭頸部外科において行われている。それらのほとんどの領域はupper aero-digestive systemに属し,直接各種刺激物質(大気汚染,排気ガス,細菌,ウイルス,食物,喫煙,アルコール飲酒,不良歯牙など)に曝露されている部位であり,疾病の発生にそれらの外因が何らかの関字が指摘されているものもある。とくに悪件腫瘍の発生には遺伝的素因,免疫能などの内因もさることながら,ある種の外因が強く関係していると考えられる癌腫も少なくない。
それらの因果関係については臨床疫学的な手法を用いた研究(case control study,cohort study)や,その裏づけとなる基礎的実験も必要となる。わが国の死亡原因の第一位は癌であり,発癌要因をなるべく避けるという癌の一次予防は癌患者の治療(癌の二次,三次予防)での努力よりもより重要であり,効果が高いものであるはずである。またcost benefitがあり,癌の減少により強力に役立つものとなるはずである。
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