今月の主題 実地医に必要な臨床検査のベース
生理的変動因子
喫煙
浅野 牧茂
1
Makishige Asano
1
1国立公衆衛生院・生理衛生学部
pp.1436-1438
発行日 1982年8月10日
Published Date 1982/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217886
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喫煙の生理薬理1)
喫煙習慣と健康障害との関連からもっぱら問題とされるのは,シガレット(紙巻きたばこ)の喫煙である.元来パイプたばこあるいはシガー(葉巻きたばこ)を用いていた人々では口腔喫煙が主であるのに対し,シガレット愛好者は肺喫煙をする人々がほとんどで,たばこ煙中有害物質の体内への取り込みが著しく多いため,喫煙の身体影響が大きいと考えられている.
シガレット喫煙時に発生する煙中物質として,現在4,000種以上の化合物が判明しているとされるが,肺喫煙によってたばこ煙中のニコチンは90%以上が肺からただちに吸収され,他の物質もおよそ82〜99%が吸収されるといわれている.生体影響をもたらす物質は多数あるが,最も重要な役割を担っているのがニコチンで,喫煙時に吸収される量はカテコラミン類を遊離させるに十分である.喫煙時の急速なアドレナリンおよびノルアドレナリンの血中レベル上昇は,心臓血管系機能亢進,気管支収縮とこれに伴う肺機能変化,脂質代謝変化,血糖上昇などに直接あるいは間接の機転を介して関与する.
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