特集 外来診療マニュアル—私はこうしている
II.外来治療の実際—私の処方
25.急激な視力障害を伴う副鼻腔嚢胞
山根 雅昭
1
1東京大学医学部附属病院分院耳鼻咽喉科
pp.196-197
発行日 1991年11月5日
Published Date 1991/11/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900421
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概説
副鼻腔嚢胞の存在によって数時間〜数日のうちに視力低下や視野障害をきたす場合,嚢胞の存在部位は圧倒的に後部副鼻腔が多い.視神経の機械的圧迫によるものが多いが,とくに視力低下が短時間に出現する場合は,感染をも伴っていると考えたほうがよい.視力の予後は,障害発現後の時間経過に左右されるから,出来るだけ速やかに嚢胞の開放と感染消褪を図るべきである.診断にあたって内視鏡下を含む鼻内所見は重要であるが,これのみで診断出来ることは少なく,また危険である.少なくとも単純X線撮影によって副鼻腔およびこれに接する眼窩内側壁,視神経管,頭蓋窩底の状態を確認すべきである.この点CTは極めて有用である.嚢胞の鼻内穿刺排液は外来で容易に行えるが,強い陰圧をかけることは禁忌であり必ず嚢胞壁の一部切除を行い自然排液を促す.抗生物質は嫌気性菌も考慮して投与する.治療は眼科ときには脳外科とも連携して行う.視力回復が得られても外来での嚢胞開放は不十分になり易いため再閉鎖の確率が高い.早期に根治術を計画する.
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