特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科における手術の危険度
鼻
18.副鼻腔嚢胞(術後性頬部嚢胞)手術の合併症—その実際と対処法
大久保 公裕
1
1日本医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.87-90
発行日 2002年4月30日
Published Date 2002/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902536
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はじめに
かつて慢性副鼻腔炎に対してCaldwell Luc1)の手術や経上顎洞的副鼻腔根本術が盛んに行われていた。これは抗生剤が普及していないことや医療環境の整備されていないことが原因であり,徹底的な病変粘膜の除去が行われていた。また,前鼻孔からみて行う鼻内手術に比べて,比較的大きな上顎洞からの手術は細かい解剖知識を必要とする副鼻腔手術にとっては,やりやすいものだったと想像できる。しかし,安易にこの手術を施行するようになった後に,術後性頬部嚢胞が多く出現している。1978年にMesserklinger2)が鼻内手術へ初めて内視鏡を応用し,ここに医療機器の進歩に伴い小型CCDカメラが開発されて,内視鏡下鼻・副鼻腔手術が慢性副鼻腔炎に対し施行できるようになった。この手術の基本は病的粘膜のみの除去であり,なるべく副鼻腔の骨の露出を避けるものである。この方法では粘膜除去をしないため,以前ほど術後性頬部嚢胞の発症は多くないと考えられる。また,手術既往の関係なしに生じる副鼻腔嚢胞は,欧米では慢性感染やアレルギーによって生じるとされるが,日本では少ない。
本稿では,この術後性頬部嚢胞を含む副鼻腔嚢胞の現在の手術手技のポイントと,周術期に起こり得るトラブルについて説明を行う。
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