特集 耳鼻咽喉科感染症の完全マスター
Ⅱ.病原体をマスターする
2.真菌症
3)接合菌症(ムーコル症)
大越 俊夫
1
1東邦大学医療センター大橋病院耳鼻咽喉科
pp.147-151
発行日 2011年4月30日
Published Date 2011/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101834
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Ⅰ はじめに
接合菌による疾患を接合菌症という。接合菌は接合胞子を形成する菌糸形真菌で広く自然界に分布する。人および動物に感染するのは接合菌門のなかのムーコル目とエントフトラ目である。
ムーコル目の感染が接合菌症の大半を占めるため臨床現場ではムーコル症と呼ばれていることも多いが学術的には接合菌症と呼ぶのが正しい1)。
ムーコル目のリゾバス属(Rhizopus),リゾムーコル属(Rhizomucor),ムーコル属(Mucor),アブシジア属(Absidia),カニングハメラ属(Cunninghamella)が起因菌として知られる。Rhizopus oryzaeが最も多く,特に鼻脳型では90%以上といわれている2)。接合菌はいわゆる日和見感染を起こし重症化する。本菌は動脈,特に脳や肺などの比較的太い血管に親和性が強く菌は血管壁に沿って進展し血栓形成を誘発する。鼻副鼻腔,中枢神経系,肺,消化器などに進展して急激な臨床経過をたどり,致命率がきわめて高い。電撃的に進行し最も予後不良な疾患でありinfectious cancerと呼ばれる3)。
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