Japanese
English
連載 臨床医のための微生物学講座・Vol.11
ムーコル
Mucormycosis
柴多 渉
1
,
掛屋 弘
1
Wataru SHIBATA
1
,
Hiroshi KAKEYA
1
1大阪公立大学大学院臨床感染制御学
キーワード:
ムーコル
,
ムーコル症
,
接合菌
,
深在性真菌症
,
β-D-グルカン
Keyword:
ムーコル
,
ムーコル症
,
接合菌
,
深在性真菌症
,
β-D-グルカン
pp.462-466
発行日 2024年5月11日
Published Date 2024/5/11
DOI https://doi.org/10.32118/ayu289060462
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
◎ムーコル症(mucormycosis)はムーコル目(Mucorales)に属する真菌による感染症の総称である.主な原因菌としては,リゾプス属(Rhizopus),ムーコル属(Mucor),リクテイミア属(Lichtheimia)〔以前のアブシジア属(Absidia)〕,リゾムーコル属(Rhizomucor),カニンハメラ属(Cuninghamella),アポフィソミセス属(Apophysomyces)などおおよそ11属がある1).これらはいずれも土壌や植物表面に広く生息している環境常在真菌であり病原性は高くはない.そのためにムーコル症のほとんどは免疫不全患者に発症するが,ひとたび発症すると急速に進行し予後は不良である.ムーコル症は比較的まれな疾患であることや,検査法が限られることから,診断が難しい.しかし,抗がん化学療法や移植療法の発展などによる免疫抑制状態にある患者の増加に伴い世界的に増加しており1),わが国においても注意が必要である.ムーコル目の真菌は他のヒト深在性真菌症を起こしうる真菌とは異なった微生物学的特徴を持ちつつ,かつ,目レベルでの多様性を持った一群でもあり,このことが疫学・診断・治療に影響を与えている.本稿では微生物学的特徴を背景としたムーコル症に特有の診断・治療等について概説する.
Copyright © 2024 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.