今月の表紙 深在性真菌症の臨床検査シリーズ・6
接合菌症
山口 英世
1
,
内田 勝久
1
1帝京大学医真菌研究センター
pp.1096-1097
発行日 1997年10月15日
Published Date 1997/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903434
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- 文献概要
これまで取り上げたいかなる真菌ともまったく異なるユニークな発育形態を示す糸状菌の1群がある.菌糸は幅広く(6~15μm径),ほとんど隔壁を持たず(無隔菌糸と呼ばれる),有性胞子として"接合胞子",無性胞子として"胞子嚢胞子"と呼ばれるいずれも特徴的なタイプの胞子を形成する.このような形態学的特徴を持つ真菌を総称して接合菌と言う.
接合菌は,自然界に広く生息し,臨床検査室においてもしばしば汚染菌として目につく.一方,接合菌の中のムーコル目の一部の菌種は,糖尿病,白血球感染症などの基礎疾患を持つ易感染患者を中心に,重篤な感染症を引き起こす.これが接合菌症(ムーコル症とも呼ばれる)であり,主として副鼻腔,肺,腸管,皮膚などに病変をつくる.接合菌は血管侵襲性が強いため血栓形成や大出血を起こしやすく,重要な臓器が侵された場合には急速に病態が悪化して通常10日以内に致死的転帰をたどる.したがって,早期に迅速な診断を必要とするが,現在のところ有用な血清診断や遺伝子診断は開発されておらず,依然として病理組織学的検出および(または)培養検査に頼るほかない.
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