特集 瞳孔のすべて
瞳孔
小川 鼎三
1,2,3,4
1東京大学
2日本学術会議脳研究
3東京都神経科学総合研究所
4順天堂大学医史学
pp.703
発行日 1985年10月10日
Published Date 1985/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431905724
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日の瞳孔すなわち「ひとみ」を英語でpupil,ドイツ語でPupille,フランス語もpupilleという。ラテン語のpupillaがこれらの源をなしたとおもわれる。英語のpupilが生徒とか子供の意味をもつことは周知のとおりで,独仏ではこの語は法律上,被後見人とか孤児とかの意味に用いるらしい。ラテン語の辞書でみると,PupillaはPupaの縮小詞で女の孤児,PupillusがPupusの縮小詞で男の孤児とある。「ひとみ」と子供または孤児が言葉の上でいつも結びついている。
ヒルトル(J.Hyrtl)の"Onomatologia anatomica"(1880)でみると,PupillaはPupa(少女,人形)の縮小詞であり,小さい人影がそこにうつることから,虹彩の穴にこの名称が古代ローマの時代から用いられた。しかもギリシア語のコーレ(x’oρη)がすでに女の子供,人形と同時に目の「ひとみ」を指したのだから,ラテン語が始まりではないとある。
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