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あとがき
坂本 泰二
pp.244
発行日 2019年2月15日
Published Date 2019/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410213060
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このあとがきを書いているのは,前年2018年の12月です。私事になりますが,2018年は学会などでアジア諸国を訪れることが多い年でした。わが国では,ベビーブーマー世代がすべて75歳以上になる2025年問題が取りざたされており,街中に白髪の人が溢れていることが普通に感じられます。しかし,アジア各国ではそのようなことはありません。インド,フィリピン,マレーシアなど,どこへ行っても,街中は若い人だらけで活気にあふれています。日本は,極めて特殊な社会になりつつあることを痛感しました。
さて,本号の特集は,眼内レンズ偏位・脱臼に対する手術です。以前は,眼内レンズ脱臼症例に遭遇することが稀であり,本疾患に対する手術も特殊技術という位置づけでした。しかし,最近は本疾患に遭遇することは日常茶飯事になり,この手術は誰もが身に着けておくべき技術になりつつあります。1980年代から,白内障手術が大幅に発展し,わが国では眼内レンズがきわめて多数の人々に移植されました。それらの人々が時を経て高齢化するとともに,眼内レンズ脱臼を起こすようになりました。それが本疾患患者数増加の大きな原因ですが,広い意味ではこれも日本社会の高齢化を反映したものでしょう。医療は,病める人たちを救うことが一義的存在理由です。ですから,社会の変化に伴って対象疾患やそれに対する治療法が変化していくのは当然のことです。そう考えると,社会全体が若いアジア諸国で,眼内レンズ脱臼の新しい治療法が発展することは当面はないでしょう。眼疾患治療の歴史という視点でいえば,ある意味で日本の眼科の先進性を示す証左でしょうか。
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