銀海餘滴
原子爆彈による白内障
pp.284
発行日 1953年4月15日
Published Date 1953/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201461
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第2次世界大戰後2年を經た今日,米國で原子研究中の5名の若い醫師は,中性子線の被爆により重大な眼損傷を受けた。同じ頃日本にある米國原子爆彈傷害委員會では廣島における十萬人以上の原子爆彈生存者を検査したが,其の際眼傷害を受けて居りはしないかと杞憂されて居つた。そこで2年程前,同委員會は海軍の將校であるRobert M. Sinskeyという26歳(當時)の眼科専門醫を聘じて原子爆彈による眼の研究を始めたのである。
同氏は廣島に於ける委員會のクリニックで,日本人が蒲鉾御殿と名附けた圓形のヒユツテ内で仕事を始めた。同委員會所藏の記録を參照して,氏は原子爆彈攻撃中又は其の後に頭髪を失つた患者で,強い照射量を受けた生存中の約500名につき研究の焦點を向けた。しかも之等の生存者たちは,被爆の中心より約2km以内の者に限られたのであつた。
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