特集 眼科臨床の進歩Ⅰ
角膜知覺の研究
片山 太郞
1
1日赤岡山病院眼科
pp.868-877
発行日 1952年11月15日
Published Date 1952/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201317
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1)まえがき
知覺に關する研究は生理學に於きましては勿論の事ですが臨床醫學方面に於ぎましても重要な問題でありまして從來より各方面に種女の研究が行はれて居ります。眼科方面に於きましても各部の知覺に就きまして詳細な報告を見て居ります。就中角膜の知覺に關しましてはMglter氏(1878)が最初に毛髪を使つて検査し角膜には觸覺温覺は存在するが痛覺は無いと述べ,次にFrey(1894)氏は自作の刺戟毛を用いて測定し角膜には壓覺は無く痛覺のみが存在すると報告しました。之に対してNarel氏(1895)は消息子,硝子棒等を用いて検査を行い角膜には痙痛を感じない觸覺が存在する事を確め,v.Frey氏の説を反駁しました。其後兩者の説に夫々賛成する學者が續出しまして角膜の知覺に就きましては永く論爭されて來ました。我國に於きましては酒井氏(1914)が直径O.1mmの頭髪及び小猫の毛で作つた毛筆を用い角膜には壓覺と痛覺が共に存在すると報告し,石津氏(1922)は38種の毛を用いて健康眼と脚氣患者の角膜の知覺を比較測定しました。以上は角膜知覺の研究の大略を申したものですが初期の研究は專ら定性的な研究が行はれて居り其後漸次定量的に測定する様になつて來ました。
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