発行日 1949年7月15日
Published Date 1949/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906494
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「私は昭和7年頃神經衰弱のようになつて頭痛がして,何か貴重なものを置き忘れたような氣がしていて,家の手傳がちつともできなくなつていました。そのため嫂に罵倒されたので私はそれをひどくうらみに性つて,それを晴らそうとして嫂を短刀で突いたのですが誤つて負つている子供を殺してしまいました。それで入獄して作業をしていた所突然空中の左の上の方14-5間はなれた所から神の聲が聞えて來ました。その聲は人の聲と同じようでした。──朝日にりようらんと咲きにおう絶大なイエスキリストの樣な人間になって呉れ──これがいわゆる神の聲だ──神の聲はお前の體の楠千代になつているのだ。そしてそれがお前に頭痛を加えている。こうして一度お前を逆境におとして後立派にしてやるためだ。──その中に妄念の聲も聞えてくるようになりました。聞えるのは神の聲だと妄念がいいます。妄念は私の親であつて,親が妄念となつてやつて來,私を刑務所にほうり込んでやつたのだといいます。私にひどい苦しみを與えるためにあんな犯罪を作つてほうり込んでやつたのだ。妄念は出世して人格活動のできる純粹能動體になつた。妄念は30年程前から呪つていて,私に犯罪をおかさせたのだ。2年程前からの頭痛も妄念が加えたのだということが私に分りました。
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