やさしい目で きびしい目で・180
決定権は自分にある
安達 京
1
1アイ・ローズクリニック
pp.1733
発行日 2014年12月15日
Published Date 2014/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200148
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私の専門は緑内障ですが,緑内障イコール失明と信じこんだ状態の緑内障患者様が来院された場合,いくら説明しても,すぐに失明の恐怖を消し去るのは難しい場合があります。これは癌患者様の心理にも似ています。癌イコール死という根強い恐怖心は半ば常識的に人々に刷り込まれており,いまだに,癌と言われた途端に,絶望する方も少なくありません。初期の生存率は高いですし,末期で見つかっても死ぬとは限らないのですが,医者に告げられる余命と抗がん剤によって,大抵の方は,その医者の予言を覆すことができなくなるようです。
以前,私の大阪のクリニックの患者様で末期の食道癌が見つかり,医者から余命半年と宣告された男性がいました。彼は即刻手術と抗がん剤治療を勧められたのですが,私に意見を求めに来られました。私は彼の意向を聞きました。彼は「半年で死んでもかまわないから,手術も抗がん剤もしたくない」と答えました。では,ご自分の希望通りにして,のんびり生きればいいと答えた私に彼は言いました。「でも,すぐに手術をしなければあと1〜2か月で物ものどを通らなくなると言われています。外科医は絶対に切れというのです。」と。
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