書評
《眼科臨床エキスパート》黄斑疾患診療A to Z
石田 晋
1
1北大大学院・眼科学
pp.1729
発行日 2014年12月15日
Published Date 2014/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200146
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『黄斑疾患診療A to Z』は,網膜のメッカである群馬大と京大のスタッフによる意欲的な作品です。まず,編集者のお一人である岸 章治教授の総説で始まりますが,最初から吸い込まれるように一気に読んでしまいました(とはいえ足掛け3日かかる長編です)。私が網膜疾患を専門に志した20年くらい前は,黄斑円孔の成因や黄斑前膜の実体,糖尿病網膜症における牽引のパターンなど数多くの謎がありました。それらの疑問を一網打尽に氷解させたのが,岸ポケット(後部硝子体皮質前ポケット)でした。しかし当時の日常診療における検査法ではなかなか可視化することができず,網膜硝子体の専門家でないとその存在を実感できない状況でした。現在はOCTの進歩によって(SS-OCTの開発により),岸ポケットをバッチリ可視化して形状解析できるまでになったわけで,隔世の感があります。
このようにOCTや眼底自発蛍光に代表される診断機器の進歩によって,新しい知見が猛烈な勢いで生まれ,新しい病態概念の確立さえ可能となりました。もうお一人の編集者である吉村長久教授が解説するMacTel type 2もその好例で,Muller組織欠損(空洞あれど浮腫なし)と考えられる層状囊胞様変性をOCTで確認することが診断の決め手です。また,黄斑偽円孔・分層黄斑円孔や中心性漿液性脈絡網膜症など古典的によく知られている黄斑疾患に対しても,新進気鋭の板谷正紀教授,辻川明孝教授らにより,新しく捉えられた疾患機序が余すところなく解説され,「古くて新しい」疾患として見直されています。
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