コラム:医事法の扉
第10回 「自己決定権」
福永 篤志
1
,
河瀬 斌
1
1慶應義塾大学医学部脳神経外科
pp.161
発行日 2007年2月10日
Published Date 2007/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100417
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「自己決定権」とは,憲法上保障されている人権の1つと考えるのが通説です(13条).患者さんの自己決定権が重要視されていることは皆さんご存知の通りです.ただ,憲法とは,本来国家権力から国民を守るために制定されたものですから,医師・患者間で「自己決定権」が問題となるのは,やや奇異な印象を受けますが,判例や通説は,「自己決定権」は,憲法の価値が私人間である医師・患者間にも推し及ばされるとしています(間接適用説).
「自己決定権」に関する有名な判例として,エホバの証人輸血拒否事件(最判平成12年2月29日判決)があります.最高裁は,「患者が,輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして,輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合,このような意思決定をする権利は,人格権の一内容として尊重されなければならない」と,「自己決定権」を保障しています(ただ,このケースは,担当医による緊急時には輸血を行う旨の説明が十分に行われていない状態で輸血が施行されたことに対して患者側が提訴していますので,もし輸血を行うという説明が事前になされていれば,事情が変わっていたかもしれません).
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