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はじめに
加齢黄斑変性をはじめとする重篤な視力障害に至る網膜疾患で共通の進行期病態は血管新生である。近年の細胞生物学的研究の進歩は,血管新生の責任分子が血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:以下,VEGF)であることを明らかにしたため,VEGFを分子標的とした治療戦略の確立に向けて複数の新薬が開発された。VEGF分子に結合してその生物活性を阻害する方法は複数あるため,これが現存のVEGF阻害薬の多様性につながっている。
大腸癌を適応としながら眼内使用が未認可のまま世界的に広まった中和抗体製剤ベバシズマブのほかに,わが国では加齢黄斑変性を適応疾患として,ペガプタニブ,ラニビズマブが2008年,2009年と相次いで厚生労働省の認可を受け,さらに3剤目のアフリベルセプトの第3相ランダム化比較試験(randomized controlled trial:以下,RCT)が終盤を迎えている。基本構造だけをみてもペガプタニブはアプタマーという修飾RNA分子,ラニビズマブは中和抗体可変領域断片,アフリベルセプトは2つのVEGF受容体融合蛋白であり,そもそも創薬デザインから大きく異なっており(表1),これらの多様なVEGF阻害薬について,その薬剤特性の相違点を把握しておくことが必要である。最近になってRCTの良好な成績が次々に報告されているが,長期にわたる継続投与の安全性・有効性についてはいまだ明らかにされていない。
加齢黄斑変性は慢性疾患であるため,抗VEGF療法はいつまで続けるべきか,ほかの治療法といかに組み合わせていくか,などといった至適な治療プロトコールを検討していくことは今後の重要な課題である。誌面の限られた本稿では,VEGFの生物活性,各VEGF阻害薬の特徴を概説したうえで,特に重要と思われる臨床試験を紹介する(表2)。
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