書評
加齢黄斑変性
岸 章治
1
1群馬大大学院・視覚病態学
pp.453
発行日 2009年4月15日
Published Date 2009/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102656
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加齢黄斑変性(AMD)は,近年,高齢者の失明の最大の原因となり,社会的な関心も急速に高まっている。一方で,その実体を明確に説明できる人はほとんどいないであろう。AMDの概念と治療はめまぐるしく変わり,とにかくわかりにくいのである。この度,上梓された𠮷村長久氏(京都大学眼科教授)執筆による『加齢黄斑変性』は,AMDをめぐる「もやもや」を吹き飛ばす快書である。
本書は5章からなる。第1章は基礎知識で,混乱しているAMDの疾患概念を明快に分類している。AMDのとらえ方は日本と欧米では異なっている。欧米ではドルーゼンの関与が大きいこと,日本ではインドシアニングリーン(ICG)蛍光造影や光干渉断層計(OCT)の新技術が導入されてからAMDを扱うようになったことがその違いであるという。たとえばポリープ状脈絡膜血管症(PCV)はICG造影なくしては診断できない。このことが日本でPCVが多い一因であるという。本邦からの論文が多く,わが国の貢献度の高さがうかがえる。血管新生の項は著者の基礎研究者としての素養がうかがえる。読者は第1章だけでAMDの全体像が把握できるようになったと感じるであろう。
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