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はじめに
現在,加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)に対する治療の大きな位置を占めているのが,血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)阻害薬である。わが国では,大腸癌を適応としながら眼内使用未認可のまま世界的に広まった中和抗体製剤のベバシズマブのほか,AMDを適応疾患として,ペガプタニブ,ラニビズマブが2008年,2009年と相次いで厚生労働省の認可を受けた。2012年末からは,さらに3剤目のアフリベルセプトが使用可能となった。これら3剤は,基本構造だけをみても,ペガプタニブはアプタマーという修飾RNA分子,ラニビズマブは中和抗体可変領域断片,アフリベルセプトは2つのVEGF受容体融合蛋白であり,創薬デザインが大きく異なっている(表1)。その薬剤特性の相違点を把握しておくことは,治療の選択肢が増え,複雑化しつつあるAMD治療戦略を立てるうえで非常に重要である。
また,多数の臨床試験が報告されているが,なかでもMARINAと呼ばれる第Ⅲ相ランダム化対照試験(randomized controlled trial:RCT)は,ラニビズマブが,AMD治療において平均視力を改善させることのできた最初の薬剤として注目を浴びる結果となった1)。その後,PrONTOと呼ばれるオープンラベル非対照試験で,導入期(治療開始後3回のラニビズマブ毎月注射)に得られた視力改善を,「必要に応じて(pro re nata:PRN)」によって維持できるか否かが検討された2)。PRN投与のプロトコールとして,光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)による網膜厚100μm以上の増加または視力5文字以上の低下を再投与のタイミングとした。37眼の2年成績では,平均9.9回の投与で11.1文字の改善(毎月投与に匹敵する結果)が得られたことから,ラニビズマブは維持療法においても有用であることが示唆され,複数のVEGF阻害薬のなかで,ラニビズマブの使用を大きく広げることとなった。
しかし,最近ではラニビズマブの治療抵抗例が報告されるようになり3,4),この時期に登場したのがアフリベルセプトである。本稿では,アフリベルセプトと他のVEGF阻害薬の作用機序の違いを概説したうえで,臨床試験の紹介,そして具体的に臨床例を提示しながらアフリべルセプトを用いた治療戦略と今後の課題を述べていく。
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