特集 緑内障診療―グレーゾーンを越えて
Ⅰ.診断編
3.視神経乳頭
緑内障性視神経症と鑑別の必要な後天性疾患
上田 潤
1
,
福地 健郎
1
1新潟大学大学院医歯学総合研究科視覚病態学分野
pp.91-97
発行日 2009年10月30日
Published Date 2009/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102927
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
緑内障性視神経症(glaucomatous optic neuropathy:GON)を診断する際,視神経乳頭の陥凹の形態,乳頭上の血管の屈曲点,色調などからリムの幅を判断し,網膜神経線維層欠損(NFLD)を観察し,乳頭のサイズ,陥凹底のlaminar dot sign,乳頭周囲脈絡網膜萎縮(PPA),乳頭出血などを参考にしておおよその視野異常を予想し,実際に測定した視野との整合性を確認する。ここで乖離がみられた場合,CT,MRI,MR血管造影などの画像診断によって頭蓋内病変や視路を圧迫する占拠性病変を除外診断する。多くの眼科医は,それらで何も異常が指摘されず,隅角にも異常所見がなく,眼圧も高くないとなると,何か腑に落ちない気がしつつも,まるで「ゴミ箱」に入れるかのように広義の原発開放隅角緑内障(POAG)と病名を付け,視野が多少なりとも変化した時点から点眼治療を開始する。「さて,ほんとうにこれで間違いなかっただろうか」という不安が残ったまま。
原発開放隅角緑内障を診断するためには,視野をきちんと読む,隅角所見を正確にとるなどの診断技術に加え,他の眼底疾患や視神経疾患との鑑別を行うだけの幅広い眼科的知識が要求される。眼杯裂閉鎖不全や上部視神経低形成(SSOH)を含めた視神経低形成など,先天的な乳頭形成異常については前項に譲り,本項では後天性疾患で緑内障との鑑別診断が必要となるいくつかの疾患について,症例の画像,視野所見を提示しながら紹介する。なお,実際の臨床では,鑑別診断したその疾患に,さらに緑内障を合併しているのではないかと疑ってみることも重要である。
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.