文庫の窓から
『大観本草』
中泉 行弘
1
,
林 尋子
1
,
安部 郁子
1
1研医会
pp.236-239
発行日 2011年2月15日
Published Date 2011/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410103555
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古きを残して加筆された本草書
本草学と呼ばれる東洋の薬物学は前漢末の頃から始まり,その最古の書物は『神農本草経』という。永元2年(500)頃,陶弘景(452-536)は,伝えられていた数種類の『神農本草経』を校勘し,新たに増補と注釈を加えて730種の薬物を網羅する本として『神農本草経集注』3巻(『本草集注』または『集注本草』と呼ばれる)を編纂する。ここでは玉石・草木・虫獣・果・菜・米食という分類がなされたが,『神農本草経』から踏襲された上品・中品・下品の三品分類も行われ,①養生のための上薬,②使い方によって毒にも養生薬にもなる中薬,③有毒で,長くは服用できないが病の治療には効果のある下薬の3種類に分けられる。
その後,この3巻本『本草集注』は著者によって7巻に編集しなおされる。さらに159年後の659年,蘇敬らが初めての公撰薬物書である『新修本草』をつくる。また,宋の太素の命で973年には『新修本草』に増補・加注した『開宝本草』がつくられ,翌年には『神農本草経』の文を白抜き文字にして後補の注釈を黒文字で表す形式として刊行される。以後,1061年の『嘉祐本草』,1108年の『大観本草』,1116年の『政和本草』,1159年の『紹興本草』と続き,『本草綱目』が全く異なる形式をもって登場するまで,同じ形式の本草書が出される。
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