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『臨床眼科』3月号をお送りします。本号が届く頃は卒業式のシーズンたけなわで,北国にも春の気配が感じられる頃かと思います。そして,今月号から第62回日本臨床眼科学会講演集の掲載が始まります。学会にて発表された演題のうち,今月は13篇の原著論文をお届けします。いずれの報告も大変有益な内容です。
田中住美氏らの「硝子体手術既往のある増殖硝子体網膜症における残存硝子体皮質」では,裂孔原性網膜剝離に対する初回硝子体手術で完全に除去できない硝子体皮質が,その後に発症する増殖硝子体網膜症の病態に関与しているとしており,網膜剝離の治療に硝子体手術を用いる場合の注意点を提示しています。また,遺伝子異常が確認された小口病症例で,金箔様眼底反射に加えてアーケード周辺の網膜色素上皮萎縮がみられたという林 孝彰氏らの「63歳時に輪状暗点を契機に診断されSAG遺伝子変異(1147delA)が認められた小口病」では,本来は停止性夜盲という範疇にある小口病の中には,稀ではあるものの進行性の視野異常をきたす例があることを論じています。同じ遺伝子異常をもった網膜色素変性もありますので,小口病と網膜色素変性という2つの遺伝性疾患の類似性を示唆する報告でもあります。
さらにおすすめなのは今月の話題,中村 誠氏の「緑内障性視神経症は構造障害が機能障害に先行するのか」と題する総説です。通常「緑内障での構造障害は機能障害に先行する」とよく言われますが,はたして本当なのかという疑問に果敢に挑む著者の洞察力には感銘しました。デシベルという単位のからくりを知るだけでも十分に楽しめる内容となっています。緑内障とは本当に奥の深い病気なのですね。読者の皆様もぜひご一読ください。
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