文庫の窓から
『脈訣』
中泉 行弘
1
,
林 尋子
1
,
安部 郁子
1
1研医会
pp.1774-1776
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102446
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
低い評価の書
岡西為人の『中国醫書本草考』では『脈経』の項の後に「付」として『脈訣』が取り上げられている。歴代の医家や学者がこの書を評価せず,この書の流行を苦々しく思っていたことを知っていた氏は,正面から取り上げる気持ちにならなかったのだろうか。
「訣」とはきっぱりとひと言でいいきった秘伝をいい,『脈訣』は歌のように短い句にして脈についての知識をまとめた本である。岡西は「このような形式のものは隋唐のころにはほとんどなかったが,宋初にはいろいろなものがあったらしい」と述べている。しかし701年に出された大宝律令の医疾令には,医学を学ぶ学生たちの学ぶべき本について書いてあり,
凡医針生,各分経受業。医生,習『甲乙』『脈経』『本草』,兼修『小品』『集験』等方。針生,習『素問』『黄帝針経』『明堂』『脈訣』,兼習『流注』『偃側』等図,『赤烏神針』等経
とあるので,現代に伝わる『脈訣』ではないにしても何かしら,脈についての歌訣のようなものがすでに我が国に入っていたと思われる。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.