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あとがき
水流 忠彦
pp.216
発行日 2008年2月15日
Published Date 2008/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102140
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2月というのは新年が始まって1か月たったと同時に,1か月後には年度末を迎えるという微妙な時期で,先生方には何かとお忙しいことと存じます。少し旧聞に属しますが,昨年2007年の世相を表す漢字として「偽」が選ばれ,揮毫した京都・清水寺の森清範貫主が嘆かれたという記事がありました。確かに「耐震偽装」から始まり,「製造日偽装」「賞味期限偽装」「産地偽装」そして防衛省元次官の「偽証」まで,昨年は一体何がホンモノなのかと暗澹たる気持ちになったものです。しかし医学の世界でも,研究論文の「捏造」騒ぎが相次ぎ,学術雑誌の編集に携わる者として「偽」の問題は決して他人事ではありません。気が早いとお叱りを受けそうですが,今年2008年の世相を表す漢字はどうなるのか,これからが楽しみです。
昨今政治も経済も医療の世界も混沌とし,あちこちで「制度疲労」あるいは「システム崩壊」の兆しが見えてきているように思います。このような混乱や崩壊をきたしている要因には多くのものがあるでしょうが,その1つに「フラット化」というものを挙げたいと思います。フラット化とは,社会や組織の構造,サービスや情報の入手・提供など社会活動のあらゆる面で,従来あった階層(ヒエラルヒー)や障壁(バリア)が消失していくということです。その結果,さまざまな財や情報が良くも悪くも自由奔放に動き回ることになります。世界の「フラット化」の急速な進展に,インターネットの爆発的な普及と,東西冷戦構造の終息が大きな役割を果たしたことはいうまでもありません。最近のわが国の混迷も,急激に進む社会のフラット化と,それに対応できていない旧制度との軋轢が深層にあるのではないでしょうか。
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