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あとがき
平山 恵造
pp.415
発行日 1983年4月1日
Published Date 1983/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205114
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フランスには教授資格者(Professeur agrégé)試験というのがある。教授資格者になるための試験である。教授資格者というのは正式の教授のポストにつく前のものであるから,日本ではしばしば助教授にたとえられるし,私もかつてはそう表現したこともあったが,日本の助教授よりは遥かに高いレベルのもので,特認教授とか定員外教授などの方がまだ近い。つまり正式な教授ポストの数は限られていて,それが空くまではそのポストにつけないが,実力的にみては十分教授の資格をもっているものが教授資格者である。それを試験するのが教授資格者試験ということになる。私はそれを直接見る機会を得なかったが,聞いたことの中に次のようなことがある。
ある日,パリ大学に属する一つの病院の一図譜館が一般には閉鎖され,一人の受験者(といっても旧本ならさしずめ助教授ということになろうか)のみの使用に供される。受験者はそこの図書のどれを用いてもよいが,与えられたテーマについて一篇の原稿を書き上げる。後日,受験者は居並ぶ試験官の前でそれを読み上げるのだが,それが定められた時間に読まれる長さのものであることを要求される。これはすごい試験である。物の正しい理解,それらをまとめ上げる力量,適切な表現,そして定められた時間に発表する能力,等等を一度にテストされる試験である。
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