文庫の窓から
『難経』
中泉 行弘
1
,
林 尋子
1
,
安部 郁子
1
1研医会
pp.88-90
発行日 2008年1月15日
Published Date 2008/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102118
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秦漢時代からの医学書
『難経』は時に『八十一難』『黄帝八十一難経』『黄帝八十一難』とも言われる書である。『難経』という書名の初出は,前回話題に取り上げた皇甫謐の著作『帝王世紀』にあるという(『宋以前醫藉攷』)。『素問』を『八十一難』と呼んでいた,という説もあるようだが,多紀元胤は『難経』の語気は素問霊枢より弱く,後漢以後の本と相通じるものが多いので後漢以後編まれたのであろう,としている。また,南京中医学院編の『難経解説』(1987初版)の序文では,張山雷(1872~1934)の「八十一難の本文は,恐らく戦国,秦漢時代に記されたものであろう。各人がそれぞれ専門について述べたもので,一時代の一人の筆によるものではない」という説を紹介し,その考えは妥当なものだろうと推定している。これらの説から,『難経』は秦漢の時代から伝えられた医学を後漢以後にまとめたものといえよう。
八十一という数をつけたのは『素問』『霊枢』に連なる書であることを表しているとされ,「難」は難しいという意味ではなく,問難の意味であろうということが定説になっている。
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