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あとがき
西田 輝夫
pp.2172
発行日 2007年12月15日
Published Date 2007/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102100
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医療と教育の現場が大変な勢いで変革されてきています。医学部は両者の変革をもろに受ける場所です。経済的な面と最近はやりの数値目標を達成するための改革にしか見えず,どこに変革の理念があるのかわかりません。地域での医療を含めて大学病院を中心とする医療は大混乱をしながらも,何とか維持されてきましたが,いよいよ限界が近づいています。実際の臨床医療は,一人の患者さんと医師が対峙して,なんとか患者さんの病苦を取り除こうとするところが原点であり,同時に目標でもあります。それ以外のなにものでもないはずです。医療も教育もその効果が社会に現れるのは何十年も先のことです。今日の世界で一番の長寿社会を作り上げてきた医療と教育の原点が崩壊した後が心配です。
患者さんの考え方(国民性と個人の考え方)や医療経済の制度の違いにより,各国での医療のやり方が大きく異なることがあります。日帰り手術はその一例で,今日アメリカでは白内障のみならず角膜移植術や硝子体手術など多くの眼科手術が日帰りベースで行われています。また欧米では結膜下注射があまり行われません。このように医療制度と時には医療の内容も社会の情勢に大きく左右されます。わが国での臨床経験が,学問のように世界中で共通とならない面があります。雑誌「臨床眼科」は,共通の医療制度と文化をもつわが国の風土のなかでの眼科医療の経験を共にする場であると考えます。
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