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あとがき
西田 輝夫
pp.832
発行日 2009年5月15日
Published Date 2009/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102732
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長い歴史を経た先人の医学や医療の記録をもとに,私たちの日常診療では安全かつ有効な治療法を選択していきます。薬剤も手術の方法も,その時代その時代の科学の進歩に依存して刻一刻と変遷していきますが,すべての知識には長い歴史が秘められているわけです。原田病に代表されるように,たった1つの症例報告が大きな疾患概念を作り上げていくことも稀ではありません。
本号でも,昨年秋の第62回日本臨床眼科学会での貴重なご報告を原著論文として掲載しています。人間を対象とする医療では,機械を対象とする学問のように常に同じ変化が生じるものではありません。1人ひとりの症例で,大小さまざまな違いがありながらも,疾患概念としての普遍性を求めていくことが,明日の同じ疾患で苦しんでいる患者さんの役に立つはずです。1例報告から,本号で掲載しているような第Ⅲ相多施設二重盲検比較試験に至る幅の広い臨床研究がありますが,それぞれが臨床的な意義をもっています。
大切なのは,いずれかの時代に役立つように,その症例の経過や著者の先生のお考えが記録されていることです。メディアは紙から電子媒体に変化しつつありますが,そこに入力する内容は私たち眼科医の責任であることに変わりがありません。いつの時代であれ,どのようなメディアであれ,いわゆる論文として記録することの大切さに変わりはないと考えます。社会によりよい眼科診療サービスを提供する一助として,雑誌『臨床眼科』がお役に立てばと考えます。
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