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あとがき
西田 輝夫
pp.1134
発行日 2007年6月15日
Published Date 2007/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101824
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より安全で,より良質の医療を提供することは,いまさら議論の余地はありません。しかしながら,昨今のわが国における改革のなかで,医療に従事している私たちは間違いなく疲弊してきています。安全を確保するための書類や説明により多くの時間を割き,安全が担保されるという電子カルテの入力に診療と同じぐらいの労力を使っています。医師が自分で考え自分で判断するのに必要な最新の知識と技術を手に入れる時間は,もはやないというのが現状ではないでしょうか。パターナリズムの否定,すべての医療行為のマニュアル化の時代となってきますと,医師が現場で判断する必要は,もはやないのかもしれません。定められた検査を行い,定められた診断基準で診断し,定められた手術や薬剤を処方するという方向に向かっているように思えてなりません。そのような時代では,目の前の一人の患者さんに医師として対峙し,自分の持っているすべての知識と技術で問題を解決することは時にマニュアルを逸脱することになり,今日では逆に好ましくない医療と考えられているのかもしれません。
医師の数も数字のうえでは増えているはずなのに,実際の医療現場ではまだまだ不足しています。少なくとも車で30分の圏内で,眼科の緊急事態に24時間対応していただける医療施設がどの程度あるのでしょうか。通常の診療時間外に,救急としての眼科医療を提供してくださる医療機関となると案外少ないのではないでしょうか。眼科救急にも十分な医師を提供できるまでには,眼科医の数は増えていないのが現状ではないかと思います。
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