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はじめに
硝子体手術の術後視力予後に影響する最も頻度の高い合併症として,術後の白内障の進行が知られている1~4)。とりわけ50歳以上の患者においては,硝子体術後5年以内での白内障の発症率は実に80%以上にものぼることが報告されており,硝子体単独手術よりも白内障手術を同時に施行したほうが理にかなった術式ではないかと思われる5~8)。しかし,まだ水晶体囊外摘出術(extra-capsular cataract extraction:ECCE)が白内障手術の主流であった時代では,白内障手術自体による術後炎症や合併症の頻度は決して少ないとはいえず,硝子体手術との同時手術による手術負荷の増大や前眼部炎症の後眼部疾患への影響などの理由から,1990年前後まで白内障・硝子体同時手術(以下,同時手術)の適応はごく一部の症例と一部の術者に限られていた。また,水晶体を除去する方法も,経毛様体扁平部水晶体除去術(pars plana lensectomy:PPL)とECCEのいずれを選択するかについて諸家による議論の絶えないところであった5~8)。
同時手術の適応拡大は,1990年代後半より急速な進展をみせ始めた9)。それには,超音波水晶体乳化吸引術(phacoemulsification and aspiration:PEA)というすばらしい術式の確立とともに,切開幅の縮小やフォルダブルレンズの開発などが大きな支えとなっていた10)。ここ10年間の同時手術のブレイクスルーは超音波白内障手術の技術革新が重要な契機となっている。現在では大多数の施設において,硝子体手術といえば,超音波白内障手術と硝子体手術の同時手術のほうがむしろ主流になっているのではないだろうか11~14)。
一方,硝子体手術そのものに関していえば,さまざまな手術器具の開発と手術手技の改良が手術侵襲の軽減と手術成績の向上をもたらし,黄斑疾患などではよりよい視機能の改善を目ざして,比較的に早期から手術治療に積極的に取り組めるようになったのが大きな進歩である。さらには,3ポートシステムが確立されてから久しく大きな変化のなかった術式に,最近になって新しい進展がみられた。すなわち,経結膜無縫合硝子体手術という比較的に低侵襲な手術スタイルの出現である(図1)。23ゲージ(0.63mm)や25ゲージ(0.50~0.55mm)のマイクロカニューラを介して行う経結膜硝子体手術は,従来の白内障手術の技術革新と相乗効果を産み出し,同時手術のなかにも新たな手術適応と術式選択の幅が出てきたと思われる15~18)。本稿では,最近の同時手術の手術適応,術式選択(組合せ)を自験例のデータを踏まえて述べる19)。
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