特集 手術のタイミングとポイント
Ⅲ.網膜・硝子体
眼内炎―薬物治療か硝子体手術か
忍足 和浩
1
1忍足眼科
pp.157-161
発行日 2006年10月30日
Published Date 2006/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100986
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はじめに
眼内炎は術者としてどうしても避けて通りたいものであり,患者としてもどうしても避けてもらいたい合併症の1つである。もし,不幸にも眼内炎になってしまっても,何とか視力低下せずに回復してもらいたいと願うものである。その眼内炎の治療は1995年にEndophthalmitis Vitrectomy Study(以下,EVS)の指針1)で明確な治療法として確立され,現在の眼内炎治療はそれに大きく沿うものとなっている。そのEVSのなかで述べられているものは,
1)硝子体手術は光覚弁の症例のみで効果があり,手動弁以上は緊急の硝子体手術は必要ないこと
2)抗菌薬の全身投与は効果がないこと
である。
EVSの治療法はバンコマイシンとセフタジジムの眼内投与が中心で,ある程度の視力予後を期待できる。EVSでも使用しているバンコマイシンは1980年代後半より眼内炎に対して使用し始めた2)。グラム陽性菌による眼内炎が多く,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下,MRSA) などの耐性菌にも効果がある抗菌薬投与としては妥当なもので,眼内炎治療における抗菌薬の中心である。
では眼内炎に対する治療は,このバンコマイシンを中心とした薬物療法だけに頼っていいものなのであろうか。硝子体手術を治療の本幹に据えて治療を行った杏林アイセンターのデータと比較して考えていきたいと思う。
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