今月の臨床 経腟超音波を使いこなす
婦人科腫瘍の鑑別診断
14.侵入奇胎と絨毛癌
岡本 知光
1
,
野村 誠二
1
,
後藤 節子
1,2
1名古屋大学医学部産婦人科
2名古屋大学医学部保健学科
pp.626-630
発行日 1998年4月10日
Published Date 1998/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903260
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絨毛性疾患は,絨毛細胞の異常増殖に起因する疾患の総称であり,胞状奇胎,侵入奇胎(侵入胞状奇胎),絨毛癌,PSTTなどに分類される.絨毛性疾患では,hCGというきわめて有用な腫瘍マーカーがあり,病勢をよく反映している.しかし,治療方針の決定,治療効果をみるうえにおいては,血中hCG値の測定のみならず,原発病巣の部位,性状,大きさおよび転移病巣の有無を把握し,それらを追跡していくことも重要である.
侵入奇胎あるいは絨毛癌の子宮病巣の検索として,従来骨盤内血管造影法(pelvic angiography:PAG)が用いられてきた.これは,絨毛細胞の子宮筋層内への侵入とそれに伴う異常血管の新生という本疾患に特徴的な現象を描出することを目的としている.しかし,PAGは侵襲を伴う検査であり,繰り返し行うことは困難である.一方,近年の超音波診断法の発達,とくに経腟超音波とカラードプラ法により骨盤内病巣の検索は容易に,しかも繰り返し行えるようになり,また,検出感度についてもPAGに比べて高く1),PAGを行う必要性はほとんどなくなってきている.
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