今月の臨床 産科と凝固異常
産科診療と凝固異常
4.凝固因子欠損症合併妊娠
小林 隆夫
1
1浜松医科大学産婦人科
pp.296-300
発行日 1998年3月10日
Published Date 1998/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903201
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近年,先天性凝固因子欠損症患者の生存年数も延長し,妊娠・分娩例が増加してきた.妊娠中多くの凝固因子は増加してくるので,もしいずれかの凝固因子が先天的に不足していても,それが妊娠によって増加してきたり,他の因子が代償的に働くこともあり,分娩時の出血は正常範囲にとどまることが多い.すなわち,妊娠・分娩時には特異的な止血機構があり,一般に子宮腔からの出血に限っては止血しやすいものである.しかし裂傷部からの出血や血腫は補充療法をしなければ止血しない.血液疾患合併妊婦の分娩は産科的適応のないかぎり計画的な経腔分娩を原則とし,切創や裂傷を作らないことがたいせつである.また分娩開始と同時に十分な補充療法を行うべきである.
先天性凝固因子欠損症は遺伝性の疾患であるため,両親,同胞の検索のほか,児への配慮もたいせつである.出生後の新生児の出血症状にも目を向けるべきで,とくに出生後臍帯出血が続き致死的となるものは,真性血友病,無フィブリノゲン血症,第XIII因子欠損症,α2プラスミンインヒビター欠損症などである.表11,2)に先天性凝固因子欠乏症の診断の進め方,図12)に先天性凝固因子異常症と産婦人科的問題点などを示した.以下に,代表的な疾患の妊娠・分娩管理を述べる.
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