Japanese
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はじめに
深部静脈血栓症とその合併症である肺血栓塞栓症は,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)と総称される。VTEは手術,外傷,がん,脊髄損傷,長期臥床,経口避妊薬,妊娠,産褥期といった環境因子に加え,遺伝因子も加わった多因子疾患と考えられる。静脈血栓症であるVTEは,凝固制御因子であるアンチトロンビン,プロテインC,プロテインSの先天性欠損症が遺伝的背景として広く知られている1,2)。これらの報告の多くは欧米人を対象になされたものである。最近筆者らは日本人を対象に,VTEの遺伝的背景に検討を加えエビデンスを集積してきた。その結果,日本人のVTEでは,プロテインS欠損症の寄与が大きいことが判明した2)。本稿では,血管内皮細胞が持つ抗凝固機構,抗凝固蛋白質プロテインSに関するこれまでの知見,日本人VTE患者を対象とした筆者らの遺伝子研究を紹介したい。本稿が,脳卒中後の長期臥床にみられることがあるVTEの病態と治療に参考になれば幸いである。
Abstract
We recently identified protein S-K196E mutation as a genetic risk factor for venous thromboembolism in the Japanese population. The E allele frequency was found to be 0.009. Therefore,a substantial proportion of the Japanese population may be assumed to be carrying the E allele of protein S and is at risk of developing venous thromboembolism.
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