原著
婦人科急性腹症における腹腔鏡の有用性と問題点
武内 享介
1,2
,
藤田 一郎
1
,
中嶌 和彦
1
,
北垣 壮之助
1
,
古結 一郎
1
1千船病院産婦人科
2神戸大学医学部産科婦人科
pp.207-210
発行日 1996年2月10日
Published Date 1996/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902430
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婦人科緊急手術の中での腹腔鏡手術の有用性および問題点を検討する目的で,子宮外妊娠と卵巣出血に着目し,その腹腔鏡手術の年次推移と周辺因子を分析した.
緊急手術に占める腹腔鏡手術の比率は増加する傾向にあったが,卵巣出血に比して子宮外妊娠ではやや低率にとどまった.腹腔内出血量は子宮外妊娠で卵巣出血よりも,また開腹術で腹腔鏡よりも高値であった.入院から手術までに要した時間は開腹術施行例で腹腔鏡施行例より短い傾向にあった.手術時間帯では開腹術では均等に分布したが,腹腔鏡ではほぼ日勤帯に集中し,深夜帯では皆無であった.子宮外妊娠,卵巣出血の緊急手術における腹腔鏡の重要性は妊孕性の温存,生体への侵襲の低減という観点から,ますます増大すると思われる.一方で,その適応は一般的に知られているような既往腹部疾患の有無,種類の他に腹腔内出血量や疼痛の強度などの重症度や搬送時間帯にも規定されており,的確な診断,出血量の把握が必要であるとともに,人員や機器などの周辺整備が,今後必要であると考えられた.
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