今月の臨床 妊娠と免疫
異常妊娠と免疫
21.胞状奇胎
大野 正文
1
,
半藤 保
1
Masayuki Ohno
1
,
Tamotsu Hando
1
1香川医科大学母子科学教室
pp.200-201
発行日 1992年2月10日
Published Date 1992/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900746
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胞状奇胎は胎盤の発育異常の一つで,絨毛膜の絨毛上皮が異常に増殖し,一方絨毛間質は浮腫と退行変性をきたして液状となり,絨毛が嚢胞となったものである。細胞遺伝学的には,全胞状奇胎では雄性発生が,大多数の部分胞状奇胎では三倍体が主要病因であることが報告されており,全胞状奇胎ではすべての遺伝子が,また部分胞状奇胎では2/3の遺伝子が父親由来である。したがって,患者にとって前者はすべて,後者は2/3が非自己の病変であり,そこには移植免疫学的機序の関与が濃厚である。しかし,自然流産で絨毛組織の自然排出をみるのに反して,胞状奇胎妊娠においては,絨毛組織の生着・増殖が観察されるのは,正常妊娠と同様,極めて興味ある事実である。これまでの報告に基づいて,胞状奇胎妊娠における免疫学的機序について紙面の許す範囲で概説する。
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