今月の臨床 妊娠と免疫
不妊・不育症と免疫異常
20.免疫学的避妊法
繁田 実
1
Minoru Shigeta
1
1明和病院産婦人科
pp.198-199
発行日 1992年2月10日
Published Date 1992/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900745
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抗精子抗体などによる免疫性不妊症や,妊娠維持における免疫学的調節機構が明らかになるに伴い,免疫的手法を用いた人工的不妊症の誘起や,人工的早期流産誘発を避妊法として利用することが考えられている。種痘に始まる各種ウイルスに対するワクチンの概念を避妊法に応用するならば,妊娠の成立維持を阻害する免疫応答を誘起できる抗原を避妊ワクチンと呼ぶことができる。現在のところ避妊ワクチンの候補に挙っている抗原にはhCG透明帯や精子などがあるが,本稿ではこれらについて最近の知見を概説し,最後に現在我々のすすめている抗イディオタイプ抗体の避妊ワクチンへの応用の可能性について紹介する。
妊娠維持に必要な各種ホルモンに対する抗体を産生させ,その抗体が妊娠中絶に作用すれば,そのホルモンはワクチンとして使用できる可能性がある。しかしながら,本来生体内に存在するホルモンに対して反応する抗体を誘起することは,自己抗原に対する免疫寛容成立の点から考えても非常に困難である。生理的なホルモンの内hCGは妊娠の極く初期より絨毛細胞より産生され非妊時にはほとんど認められないことや,hCGの分子構造の解析結果より,β—subunitのC未端のペプタイドがhCGに特異的であることが明らかになってよりこのホルモンをワクチンに応用するべく,研究が進められている。
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