特集 Challenging complicationsと分娩のタイミング
重症糖尿病
浜田 悌二
1
Teiji Hamada
1
1久留米大学医学部産科婦人科学教室
pp.845-848
発行日 1989年9月10日
Published Date 1989/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409208065
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わが国では糖尿病を合併した妊婦の多くはNIDDM(インスリン非依存性糖尿病)のものが多く,したがって糖尿病を合併したとはいえ幸いにも比較的軽症例が多かった。しかし,最近では10歳以下に発症した年代が生殖年齢期に入るとともに,発症後長期間を経たもの,とくにIDDM (インスリン依存性糖尿病)例が増加しはじめている。このことから,わが国では分類法として有用性を疑われたWhite分類でクラスD3,F,R,FRなどに分類される細小血管合併症のある糖尿病婦人の妊娠の機会が増え,今後もさらに増加することが予測される。
今回のテーマは糖尿病妊婦における分娩のタイミングに関する問題点に言及することである。これには2つの重要なポイントがあると考えてよい。1つは妊娠中の母児のdynamicな変化の中で,胎児救命の立場から,分娩タイミングを時々刻々把握するための努力に関係するものである。2点は重症糖尿病においての妊娠中の母児環境が,胎児発育ならびに長期予後も含む母体予後に対する影響を考えての妊娠継続期間への配慮である。第1点については主に胎児成熟度,胎児仮死を中心とした分娩タイミングの設定となることから,周産期管理上,他の母体合併症の管理方針と基本的には変わらないし,また,その取り扱いのポイントはこれまでしばしば紹介されているところでもある。そこで今回は第2の話題を主眼として記述してみたい。
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