特集 治療最新のトピックス
周産期
糖尿病合併妊娠のインスリン療法
哲翁 正博
1
,
浜田 悌二
1
Masahiro Tetsuo
1
,
Teiji Hamada
1
1久留米大学医学部産科婦人科教室
pp.1156-1158
発行日 1989年12月10日
Published Date 1989/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409208127
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Ⅰ.概念
内因性インスリンの分泌動態は24時間を通じて平均的に分泌される基礎分泌と,食後の血糖上昇に応じて分泌される追加分泌よりなっている。強化インスリン療法(intensified conventional insulin therapy ICIT)は,健常者の生理的インスリンパターンを模倣してインスリンを補充し,相当する効果を期待するもので,基礎分泌の補充を速効型インスリンの持続注入か持続型インスリン注射で,追加分泌の補充は速効型インスリン製剤を用い,投与法の違いによって頻回注射(multiple injection of insulin,MII)と持続皮下インスリン注入療法(con—tinuous subcutaneous insulin infusion,CSII)に分けられる。糖尿病合併妊娠では,妊娠中の血糖レベルを正常妊婦のレベルに下げ出来るだけ維持することが母児予後を改善するうえに重要であることは周知の事実で,IDDM妊婦のみならずNIDDM妊婦,さらにはGDM妊婦も強化インスリン療法の適応となる場合がある。実施に当たり,注射手技,自己血糖測定法(SMBG),低血糖への対処,食事,運動のとり方など患者教育訓練,在宅患者と医療施設との緊密な連携が肝要である。低血糖のリスクを抑え,血糖値の可及的正常化には代謝調節の適切な評価が求められ,血糖の自己測定値,HbAl,HbAlcフルクトサミン値を参考とするが,コントロールの目標は妊婦の場合,空腹時血糖値100mg/dl以下,食後値130mg/dl以下,HbAl値9%以下,HaAlc値6%以下におく。
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