特集 絨毛性腫瘍
核酸測定からみた絨毛性腫瘍の癌性性格
伊藤 治英
1
,
保坂 孝二
1
,
島海 達雄
1
,
河井 禧宏
1
,
遠山 晃
1
,
沢木 国生
1
,
川口 健一
1
Haruhide Ito
1
1東京慈恵会医科大学産婦人科学第2講座
pp.609-612
発行日 1972年7月10日
Published Date 1972/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204639
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はじめに
細胞の分裂,増殖あるいは遺伝情報の中心的にない手とされている細胞核デオキシリボ核酸(DNA)は,またその量の変化が細胞の代謝活性の程度を示すに充分であるとされている。そこでDNA測定成績から絨毛性腫瘍,とくに絨毛上皮腫の性格についてふれてみたい。
絨腫の発生に関して,母細胞たる絨毛細胞が異個体細胞に属することから,母児間の免疫学的立場からの移植発生が考えられ,絨腫細胞と正常絨毛細胞との間には,細胞学的な本質的差異がないという概念がある。これは少なくとも多くの癌発生が細胞の変異に基づくという概念とは異つている。とくに絨腫発生では,その前に前癌性変化ともいうべき胞状奇胎の先行をみることが多く,また破壊性奇胎の過程の介在も強く示唆されている。従つてこのような変化を含め,各種の絨毛細胞について,その核DNAを測定し,比較検討することは絨腫の発生の解明やその性格を知る上で,きわめて興味のあるところと思われる。
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