特集 悪性腫瘍の診断
絨毛性腫瘍
野嶽 幸雄
1
,
田村 昭蔵
1
,
前田 徹
1
,
押切 冏之
1
,
蔵本 博行
1
,
山田 拓郎
1
Yukio Notake
1
1慶応義塾大学医学部産婦人科教室
pp.915-921
発行日 1970年10月10日
Published Date 1970/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204292
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強く対癌対策が叫ばれ,種々な施策が推進されつつあるが,いまだ巷間に絨毛性腫瘍(以下絨腫瘍)の声を聞くことは少ない。しかし産婦人科諸家のたゆまざる努力により,最近本症の診断・治療上に著しい進歩をみると同時に,啓蒙的活動により,本疾患に関する認識は世上に次第に高まりつつある。すべての悪性腫瘍が早期発見・早期治療を治療上の要諦とする例に洩れず,本疾患においてもこの点に最大の関心がもたれている。ことに絨毛上皮腫(以下絨腫)は急速に血行性転移を形成し,今日の化学療法をもつてしてもその予後極めて不良なので,これが対策の主眼目として早期診断の確立,普及,徹底化が急がれているところである。幸か不幸か,絨腫の半数以上が胞状奇胎(以下奇胎)後に発生するところから,進んで奇胎術後患者の地域的管理機構や特殊外来制が設けられ,積極的に有効かつ適切な管理が行なわれるに至つたことは重大な進歩といえよう。このような変化から,われわれの診断対象も数年来大幅に変化しつつあり,今日なお咳嗽や強度の性器出血を認め末期状態で突然来院する患者があるとはいえ,極く早期の状態が診断上の主な対象となるようになつてきた。
本稿では編者の要請に基づき最近数年間における絨腫瘍診断上の主な問題点につき若干の私見を述べ,ついで診断につき各論的に注意すべき点を中心として略説したい。
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