特集 悪性腫瘍の治療--最近の焦点
絨毛性腫瘍の治療
川島 吉良
1
Yoshiro Kawashima
1
1名古屋大学医学部産婦人科学教室
pp.219-228
発行日 1972年3月10日
Published Date 1972/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204572
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はじめに
絨毛性腫瘍(以下絨腫瘍と略す)とは絨毛の上皮細胞から発生する腫瘍で国際的にはtrophobla—stic neoplasia, trophoblastic diseaseまたはchorionictumorと呼ばれる。日本産科婦人科学会では,これに属するものとして絨毛上皮腫chorionepithelio—ma (以下絨腫),破壊性奇胎 destructive mole(以下破奇)の他に胞状奇胎hydatidiform mole (以下胞奇)を包括呼称している。
絨腫瘍の有する特徴──①胎児に由来する組織を母組織としている関係上,元来宿主にとつて寄生的性格が強い。②流動血に直接触れる環境で増殖するため薬物が作用し易い。③しばしば早期に広範な多発性転移を形成する。④絨毛性ゴナドトロピン(HCG)を産生分泌し,腫瘍の消長を如実に表現するためHCG値の定量を指標とし治療効果の客観的判定が可能である──は本質的に化学療法に適した疾患であることを示唆し,今日絨腫瘍が癌化学療法の先導的地位を占めるに至つた由縁でもある。
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