特集 不妊症の診断
着床不全
鈴木 秋悦
1
,
今井 敏郎
1
,
井上 正人
1
,
浜田 康生
1
,
上見 幸司
1
,
浜田 宏
2
,
近藤 慶明
2
Shuetsu Suzuki
1
,
Hiroshi Hamada
2
1慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
2東横病院産婦人科
pp.481-488
発行日 1970年6月10日
Published Date 1970/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204220
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はじめに
着床の機序については,今日,なお,多くの末解決の問題が残されており,とくに,人胞胚の着床機構は,全く解明されていないといつても過言ではない。したがつて,着床障害または着床不全の病態生理の理解も,人以外の哺乳類での実験的な背景から,それを類推しているにすぎない。
臨床的には,従来より,黄体機能不全症が,広義の着床不全として理解され,その病態についても多くの報告がなされ,最近,その診断上での問題についても論議されてきている。しかし,着床不全の原因が,黄体機能の不全にのみ限局されないことは,最近の生殖生物学の進歩によつて明白にされており,性細胞の成熟過程の異常に始まり,精子または卵子の老化,受精の異常,胞胚と子宮内膜相関の破たん等,基礎的には,多くの問題が着床不全の原因として提起されてきており,機能性不妊の中でも,とくに重要な意義を有するものとして注目されてきている。
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