特集 卵管--その生理と臨床
卵管の分泌
飯塚 理八
1
,
鈴木 秋悦
1
,
今井 敏郎
1
,
近藤 慶明
1
Rihachi Iizuka
1
1慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.375-384
発行日 1969年5月10日
Published Date 1969/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204034
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
卵管は子宮,卵巣両臓器間のbridgeとして,主に,その解剖学的意義が強調されてきたが,最近,受精現象の生物学,受精卵の初期発生過程に関する研究が進むにつれて,卵管環境の生殖生物学(Reproductive Biology)上での意義が再認識されてきた。臨床的にも,不妊症の病態生理上で卵管が重要な因子を占めていることは,多くの研究によつて明らかにされてきたが,主として卵管の器質的障害が論じられ,卵管機能の根本的な問題である機能面については,方法論的な難しさもあつて余り報告がない。器質障害の改善による卵管の疎通性の向上が,妊孕性の向上に与つていることは勿論であるが,さらに,精子,卵子,受精および受精卵の初期発生などの環境としての卵管の生物学的意義に注日する必要がある。
卵管上皮に分泌機能が存在することは,比較的古くから知られていたが,主として,卵管上皮に対する形態学的な研究であり,卵管分泌液の卵管環境における意義については明らかにされていなかつた。しかるに,最近に至り,Mastroianniらによる種々の卵管分泌液採取法が報告され,その生化学的組成の分析も可能となつてきた。さらに,Suzuki & Mastroianni1)(1965)が,家兎卵を用いて,家兎卵管分泌液中でのin vitroでの受精に成功し,卵管環境の生殖機構での意義が次第に明らかにされてきた。
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.