- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
1961年Greenblatt1)がClomid (Clomiphene citrate)を各種の無排卵,無月経患者に投与し,96例中72例,すなわち75%に排卵を誘発し,さらに11例が引続き妊娠に移行したと報告して以来,この非ステロイド系の合成estrogen, Trianisyl chloraethylene (TACE)の誘導体であるClomidの臨床効果が内外でさかんに検討され,すでに多数の臨床成績が報告されている。本邦で市販されるようになつたのは昭和43年の春からであるが,Clomidは使用方法も簡便で比較的廉価であり,さらに従来のsteroid療法やgonadotropin療法に比して排卵誘発成績もすぐれており,産婦人科領域においては,時代の先端をいく薬剤の一つと考えられている。
しかしClomidは初期の開発途上においては,かなりの大量が長期間投与されたために,PMS製剤やHMG製剤と同じように下腹部痛,卵巣腫大そして双胎などの副作用が報告され,また特有の副作用として顔面紅潮がかなりの頻度にみられている2)。したがつてClomidの排卵誘発効果がすぐれているにもかかわらず,副作用に必要以上に慎重であるあまり,Clomidの投与方法についても規制が加えられており,このためClomidは高い排卵率を示すわりには,報告される妊娠率は意外に低いようである。しかし,われわれの経験では現在用いられている1日50rng,100mgまたは150mgを5日間だけ服用するという方法では,数周期間連続して服用させても副作用は全く起こりがたく,むしろ連続服用することによつて妊娠例がまし,また無排卵周期症では数周期間使用することにより,間脳--下垂体--卵巣系の機能が調整され,投薬を中止しても自然排卵が起こりやすくなるようである。したがつてClomidは従来のように,1周期投与して排卵した症例は次の周期は投薬を中止して,自然排卵を待つという方式にこだわらず,あえて数周期間,妊娠するまで連続使用した方がよいという結論に達した。以下,これらの臨床成績の詳細について報告する。
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.