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はじめに
子宮内膜症の初発部位は骨盤腹膜,特にダグラス窩腹膜である.骨盤腹膜に発症した子宮内膜症はその深部あるいは周辺へと浸潤していく.したがって,骨盤内臓器,例えば卵巣や直腸などは子宮内膜症の好発部位となる.また,発症頻度は低いものの,膀胱,尿管,肺,関節,臍,鼠径部などに発症することも知られている1).臨床症状は月経痛や慢性痛など疼痛が主たるものであるが,発症部位に特異的なものもあり多岐にわたる.そのいずれもがエストロゲンの変動に関連しており月経時に増悪することが多い.
子宮内膜症の治療法は外科治療と内科治療とに大別できる.内科治療では種々の薬剤が使われる.GnRHアゴニストは卵巣でのエストロゲン産生を抑制することによって,また,低容量ピルやプロゲスティン製剤は血中エストロゲンのレベルを低値の状態で維持し続けることによって子宮内膜症に付随する臨床症状を軽減させる.これらはいずれもsuppressive treatmentであり,子宮内膜症そのものは残存しているのである.子宮内膜症性疼痛に対する対症療法として非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)が一般的に広く使用されている.これも一種のsuppressive treatmentである.現時点において,子宮内膜症に対する唯一のcurative treatmentは外科治療である.治療効果を高めるには子宮内膜症を完全に除去することが重要である2).子宮内膜症の完全除去が困難な場合には卵巣摘出が行われることもあるが,このような症例において卵巣欠落症状治療の目的でホルモン補充療法を行うと,子宮内膜症は残存しているのであり,当然の結果ではあるが症状再発が起こる3).
性器外子宮内膜症の治療についても同様の議論が成り立つ.臨床症状を根治的に消失させるには外科的に子宮内膜症病巣を完全に除去することが肝要である.以下にいくつかの性器外子宮内膜症の外科治療について述べる.
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