Current Research
子宮内膜症と不妊
杉並 洋
1
Hiroshi Suginami
1
1国立京都病院産婦人科
pp.99-107
発行日 1992年1月10日
Published Date 1992/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900720
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子宮内膜症は主として生殖年齢婦人に発生し,月経痛,性交痛などをもたらし日常生活の大きな障害となるとともに不妊症の一原因であると考えられている。子宮内膜症の頻度は高く,生殖年齢婦人の3〜7%,不妊婦人の20〜40%,原因不明不妊婦人の40〜70%に本症が認められると言われている。子宮内膜症の好発部位はダグラス窩,仙骨子宮靱帯,膀胱子宮窩,卵巣などの骨盤内臓器であるが,時には肺,胸膜,横隔膜,消化器系,尿路系,四肢など種々の遠隔臓器,あるいは非常に稀ではあるが男性にも発生する1)。
子宮内膜症の発生に関して種々の説が提唱されている(表1)。その中で現在主流をなすものは子宮内膜播種着床説(Sampson説)2)と体腔上皮化生説である3,4)。子宮内膜播種着床説とは,月経時に剥脱した子宮内膜が月経血とともに卵管を逆流し腹腔内に到達しそこで着床し増殖するという説である。確かに月経血の経卵管逆流は腹腔鏡下によく観察される現象であり,またその中に着床可能な子宮内膜組織が混在しているのも事実である。しかし,剥脱した子宮内膜が本当に腹腔内に着床し増殖するという証拠は現在のところまだ得られていない。
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