今月の臨床 産婦人科臨床の難題を解く─私はこうしている
III 婦人科癌治療
【子宮頸癌】
2.子宮頸癌における術前化学療法の適応は?
熊谷 晴介
1
,
杉山 徹
1
1岩手医科大学産婦人科
pp.550-559
発行日 2008年4月10日
Published Date 2008/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101743
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1 はじめに
局所進行子宮頸癌に対する術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy : NAC)は,(1)腫瘍縮小に伴う手術完遂度および適応症例の増加,(2)潜在・微小転移巣の制御,(3)縮小手術の可能性,などを目的として種々の臨床研究が行われてきた.近年,有効な抗癌剤の導入により卵巣癌に準じた奏効率が得られ,メタアナリシスでも一部に有用性が報告されている.しかしながら,NAC導入後約20年が経過した現時点で,NAC後の手術の根治性と機能温存,術後治療などの重要な臨床事項は依然不明であり,標準的治療には至っていない.今後,早急に解決すべき課題は以下の4点であろう.(1)対象,(2)推奨レジメン,適切なサイクル数,(3)同時化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy : CCRT)との比較試験,(4)組織型別効果(腺癌)の研究.
これまでは小規模な第2相試験やランダム化比較試験(randomized controlled trial : RCT)が多く,対象やレジメンも異なることより,十分なエビデンスが確立できない.特に欧米からの研究・報告が些少なことが大きな原因の1つと考えられる.これは局所進行症例に対する治療方針に関して,手術療法が中心の本邦と,放射線治療が中心の欧米との歴史的な治療スタンスの相違に加え,近年の欧米でのCCRTの標準化が大きく影響している.これらを踏まえ,本稿では子宮頸癌に対するNACに関して,その現状と今後の展望を中心に概説する.
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